庭づくり・暮らしづくり日記7~真・行・草の空気をつくる~

書道の楷書(真書)・行書・草書をご存知でしょうか?楷書は崩されていない、読みやすい字ですね。それを崩した行書、さらに崩したものが草書です。日本庭園における真・行・草もこれと同じです。
延段の作り方を見るとわかりやすいのですが、真は切り石で仕上げたきっちりとした形です。行は切り石と自然石が混ざったもの、草は自然石だけのものです。これをエノコロの庭にも取り入れています。

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玄関へと至るアプローチの手前は、切り石と自然石を混ぜた行。門の奥には切り石+洗い出しの階段があり、玄関前に続きます。ここは真を意識しています。玄関までのアプローチは、家族だけでなく来客も通る半ばパブリックな場所なので、真・行の雰囲気で考えました。

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まだ工事中です。大きい飛び石は別現場で処分のため引き上げた鉄平石です。
造園業界では古い庭の解体で出た石を再利用することがあります。
石は古くなっても、腐らず、強度も落ちず、より味わいを増して何度でも使えます。

基本的に家族だけのスペースである庭側は、切り石を使わない自然石のみの草のスタイルです。歩く部分は、自然石を使った延段風の園路になっています。石積みの際は、石を割って面を出して積んでもらっていたのですが、園路では面を出さずにそのまま使います。そのため、割とラフな仕上がりになるのですが、これがまた良い感じ。庭というプライベートな場所では、これぐらいラフで良いだろうと考えます。モルタルは使わず、土極め(土を突き固めて固定する方法)で施工してもらいました。モルタルを使わないと、石が動いてしまうことがありますが、家族しか使わない、歩行でしか使わない部分なので問題ありません。

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モルタルを使わないからこそ、職人技が光ります。

モルタルを使わない利点として、リフォームがしやすいこと、石にモルタルがつかないので再利用しやすいこと、植栽場所がアルカリ化しないこと、透水を妨げないことが挙げられます。用途や場所を選びますが、メリット多いな♪と感じます。きっちりとお庭を仕上げたい場合は、モルタル等で園路もしっかりつくった方が良いかもしれませんね。

アプローチと庭で共通の自然石(大沢石)を使いながら、空気感を変えたいと思い、このような形を考えてみました。真は格式が高い場所に使うとか言いますが、あまり深いことは考えていません。玄関側と庭側の性質が違うことを、空気で感じられるようにできたかと思います。