エノコロ庭園設計室が目指す6つの庭の形
時間とともに成熟する庭
建築やインテリアと庭・外構の大きく異なる点は、ダイナミックに変化し続ける植物が主役となることでしょう。植物の成長と季節ごとの表情、それらの魅力を引き立てるのが自然素材だと思います。木や石、土を使った庭は、時間の経過とともに少しずつ表情を変えていきます。それが味わいとなり、庭の景色の奥行となっていきます。
お手入れいらずで変化が少ない樹脂や人工芝は確かに管理が楽かもしれませんが、これらの素材は成熟していくことはなく、少しずつ劣化していく一方です。これから長く住み続けることになる我が家。家族の成長とともに、どんどん素敵な庭になっていくと思うとワクワクしませんか?
とはいえ、家事や仕事、子育てなど忙しいご家庭ではこまめな手入れは負担になってしまいます。私自身、二人の子育てをしている身ですので、日々の暮らしは理想だけでは語れないということは実感しています。せっかくの庭がご負担となってしまうようなことは避けたいです。植物選び、素材選び、設計の工夫で、自然素材や緑を楽しみながらも手入れの負担が少なくなるようなご提案を心がけています。詳しくは庭造りコラムの植物のこと、素材のことをご覧ください。
自然と繋がる装置としての庭
私たちの暮らしは、先人と多くの方の努力でとても便利になっています。便利な暮らしの中では、人が本来持っていた自然との繋がりを感じることは少なくなってしまいます。そこで一番身近に自然を感じられる庭を通して、自然と繋がることを日常にしていきたいと考えています。
例えば野菜や果物の皮のような生ゴミは、コンポストによって堆肥化することができます。庭の落ち葉も同じく、燃えるゴミとして捨てずに庭で腐葉土にできます。自然の中で起きている営みを、庭でもつくることができます。コンポストや腐葉土づくりはCO2削減にも貢献します。
家庭菜園も同じく、自然との繋がりを強く感じられます。小さな種や苗が、太陽の光と水でぐんぐん大きくなっていく様子には目を見張ります。改めて、自然に生かされているということを実感します。
自然との繋がりを日常に取り入れること。少し面倒に感じるかもしれませんが、こうした暮らしは思った以上に心地よいものです。
子どもの学び場としての庭
大人は理解している自然との繋がりも、幼い子どもにとっては未知のもの。生ゴミが堆肥になる?落ち葉が腐葉土になる?そんなことを目の当たりにすれば、自然の力を実感の伴った経験として理解できるはずです。家庭菜園も同じく、手間と時間をかけて収穫できた野菜は、改めて毎日の食べ物に感謝するきっかけになるはずです。
季節によって違った植物が変化すること、違う虫や鳥がいること、そんな些細なことも庭からゆっくり学んでいけます。
生き物の住処としての庭
街の緑は地域の生き物にとって大切な居場所となります。公園のような広い場所でなくても、地域に緑豊かな庭が連なることで、虫や鳥の生息地となります。庭を通して、人間だけでなく、地域の生き物にとっても居心地の良い場所がつくれると考えています。
環境改善機能としての庭
街に庭が増えることで、街全体の環境調整機能がアップすると考えます。例えばヒートアイランド現象は、日中に蓄えられたコンクリートやアスファルトの熱が夜間に放熱することが一因と言われています。熱を蓄えない土や緑、透水機能のある素材等を使うことで、ヒートアイランド現象を緩和できます。近年増えている大雨も、水が浸透できる地面が多ければ多いほど、被害は起きにくいと考えられています。
家の周りをコンクリートで固めてしまうのではなく、土を残して植物を植えることで街に良い影響を与えることができるのです。
暮らしやすさをつくる庭
パッシブデザインの手法を取り入れた設計で、屋外空間だけでなく家の中まで快適に変える庭を目指しています。小さな変化でも、電気やガスの使用量が減り、CO2排出削減にもつながります。詳しくはパッシブデザインについてをご覧ください。